MS法人の関連者間取引に係る書類の整理・保存
1.はじめに
令和8年度税制改正において「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」が創設されました。この改正を受けて関連者間の取引に関しては、特定事項を記載した書類を作成・整理し、7年間保存することが必要になりました。これはMS法人との取引にも影響する改正となっています。
2.関連者間取引の適正性と経費否認リスク
まず、医療法人とMS法人などの関連者間においておこなわれる取引(業務委託契約など)が適正価格を著しく超えている場合、税務調査で指摘されるリスクがあります。
具体的には、不当に税負担を減少させているとして「同族会社の行為計算の否認」規定が問題となるケースがあります(※医療法人は法人税法上の「会社」ではないため、同規定は直接適用されないというのが通説ですが、過大役員給与などの個別規定による否認リスクは残ります)。
また、適正価格を超えた取引は「利益調整」とみなされ、実質的な贈与(寄附金)として損金算入が認められない恐れがあります。さらに、実態のない業務への支払いや、勤務実態のない役員への報酬は「仮装・隠蔽行為」として重加算税の対象にもなるため、慎重な運用が求められます。
3.「青色申告取消し」の可能性
これまでMS法人との取引は「いかに適正価格であることを税務調査で証明するか」が焦点でしたが、令和8年4月1日以後開始事業年度より、それを証明する書類の整備・保存が必要となりました。それが「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」の創設です。
この法改正により、医療法人とMS法人のような関連者間取引において、契約書や請求書に「提供するサービスの明細」や「対価(支払額)の算定根拠」の記載がない場合、詳細を記した補完書類を新たに作成し、保存することが法的に義務化されました。この書類要件を満たさなければ「青色申告の承認取消し」や「推計課税」の対象となります。
4.今後取り組むべき実務対応
この税制改正により、「とりあえず毎月定額を支払う」「期末に利益を見ながらグループ内の費用負担を調整する」といった取引は通用しなくなりました。
しかし、今回の改正により書類を整備していなかった事で経費を否認されるわけではありません。計算根拠の妥当性を問われることとは別に、書類が整備・保存されていないことで青色申告の承認の取消事由に該当するリスクが発生します。
これらのリスクを回避するためには、MS法人との間で交わしている業務委託契約書や日々の請求書を見直す必要があります。契約書等に対価の額の明細などの記載がない場合には、提供される役務の具体的な内容と、稼働時間や実費に基づく客観的な価格の算定根拠、計算方法を文書化し、保存することが必要になります。
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