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2019/02/26

承継開業のポイントは4つ バトンを受けて 新クリニックへ

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はじめに

 歯科医の先生に「承継開業をどう思われますか」とお聞きしますと、ほとんどの先生は「全く新しい場所に新規開業するよりもリスクは低いんじゃないかな」とおっしゃいます。「承継開業」のメリットは、医療機器が揃っていること、教育済みのスタッフがいること、来院して頂いている患者さんを継続的に診療できることが、まず挙げられます。しかし、それは一般論であって承継をお考えのクリニックの経営状況をしっかりと分析することが大切です。

 また、承継後も理想とするクリニックに生まれ変えるためには、新たな設備投資やオペレーションなどをモデルチェンジしなければなりません。承継時の税負担もコントロールする必要もありますので、しっかりと分析をされ、計画を立てていきましょう。

 

1.まずは承継するクリニックの経営状況を分析しよう

 

開業して長い年月が経っているクリニックの業績は、3つのタイプに分けられます。

 

タイプ①

 患者さんが減り続け、収入が右肩下がりのクリニック。利益が少ないので医院設備が古く、近隣に競合の新しい医院があり、患者さんを取られています。

タイプ②

 患者さんの来院人数と収入は横ばいと健闘中のクリニック。利益が出ているので定期的に医院設備の改修または医療機器の買い替えができていて綺麗で清潔感があって、地域の多くの患者さんが長年通院してくれています。

タイプ③

 開院以来、順調に患者さんが増え続け、収入も右肩上がりのクリニック。利益が出ていて、バイタリティあふれる院長先生が近所のライバルの若い先生にも負けずにがんばっていらっしゃいます。

 

 クリニックは、この3つのタイプに分けられますが、承継するクリニックが②や③のような魅力ある医院であれば、承継後も業績アップが見込めます。しかし、ほとんどのケースは①のような医院が多いのが実情です。

いずれにしても、必要な情報として、下記にあげる資料を開示してもらい分析をしましょう。

 

業績分析ができる資料とは

 

  • 確定申告書(個人事業)または決算申告書(法人)2期分

 設備の種類と使用年数・借金・収益・経費のかかり方などを分析してみましょう。設備や人材にお金がかかっていて、予想外に利益が出てないこともあります。

 

  • 月間レセプト総括表と過去1年推移

 季節変動も含めて、どのくらい安定して来院患者数があるかをチェックしましょう。保険点数や自由診療の平均単価や構成比などがポイントです。

 

  • 診療行為別患者数

 重点を置いている診療は何か、収益を上げている診療は何か、そのウエイトもチェックしてみましょう。

 

  • 従業員名簿

 従業員の経験年数や年齢・給与や退職金の有無などから人材や経費なども把握できます。

 

 このような資料から分析をすることで、承継時にどのくらいの資金が必要なのか、承継後にどのくらいの収益が見込めるのかを想定することができます。

 

 承継のための資金を提供する金融機関も 上記の観点から分析を行い、「承継させても返済できる収益をあげることが可能か?」という視点で融資を判断します。もちろん、タイプ①のような業績が右肩下がりのクリニックのようなケースでは、金融機関も厳しい見方をするのは当然です。

 

2.承継するバトンは医院そのもの、従業員、患者さんの期待も

 

承継とは、医院そのものや従業員はもちろん、患者さんの期待も含めて承継することです。

 最近の患者さんは、自宅や勤務先に近い医院で診てもらえれば良い、保険で安く済めばいいという考えから、通院できる多くの医院の中から◯◯の先生に診てもらいたいということにシフトして、クリニックを選ぶようになってきました。この「◯◯の先生」とは、例えば「◯◯が専門」のとか、「症例数が豊富」とか、「◯◯病の患者さんが多い」とか、「詳しく検査し分かりやすく説明してくださる」とか、「◯◯治療が得意」などということです。

 つまり、他の医院と比較をして、より良い診療を期待して、医院を選んでいるのです。このような患者さんの期待も承継することになります。また、従業員も長年その院長と共に医療に取り組んできたことから、院長の診療スタイルや考え方が身にしみついているため承継する新院長とどうしても比較するようになります。これを引き継ぐことを踏まえたうえで、ご自身の経営・診療スタイルを徐々に構築することが成功させることも大きなポイントです。

 

 承継するものは多くありますが、その全体像は以下のとおりです。

 

① 医院そのもの 土地・建物  *テナントの場合は賃貸借契約と内装設備

② 医療機器 家具備品

③ リース資産・リース債務

④ 診療材料・消耗品

⑤ 従業員と雇用関係

⑥ 借入金

⑦ 駐車場等の賃貸借契約

⑧ 患者 (信頼・期待)

⑨ 評判

⑩ 取引先との関係

⑪ 医療法人の場合は、その出資持分と法人格

⑫ 医療法人の隠れ負債

⑬ 医療法人の過年度 課税のリスク

 

 

※①から⑥までの資産及び債務は、個人所有を想定しています。

 

 この全体像の一部または全部を引き継ぐことになります。親から子への承継のケース、第三者への承継のケースで、大きく違います。親子間承継の場合は、子供が欲しい資産だけを承継し後は親が債務を弁済していくということはなく、全部を継ぐのが一般的なのかもしれません。第三者への場合は、相互の話し合いのもと、「何をいくらで引き継ぐのか」を話し合いで決定し、一部または全部を承継することとなります。

 

3.個人事業で親から子への承継をケーススタディしよう

 

 ①から⑬まで承継する方法と課税関係について、個人事業で親から子への承継のケースをご紹介していきましょう。

【親子間】

① 医院そのもの 土地・建物

親子間の承継では、「売買」と「賃貸借」と「使用貸借」の3つの方法のどれかで行います。状況に応じて選択することになります。

 

 「売買」とは、親から土地建物を購入する方法です。親の事業用借入金が多額に残っていて、これを引き継ぐ必要がある場合などは、「売買」を選択します。

■売買のポイント

・時価で購入することになります。時価が不明な場合は、不動産鑑定士へ時価の見積を依頼します。よって、不動産価値によっては、多額の購入資金が必要になる場合もあります。

・購入に付随する費用(登録免許税、登記費用、不動産取得税)

・先祖代々の土地の場合は、親に譲渡税が課せられる場合もあります。

・親が消費税課税事業者の場合は、建物代に消費税が課せられます。

・親は売却代金で事業用借入金を返済することになります。

 

「賃貸借」とは、親に相場に近い賃料を払いながら借りる方法です。「売買」と比べて最初に多額の資金が不要になるメリットがあります。

■賃貸借のポイント

・テナント物件の公開情報などから近隣の賃料相場と比較して賃料を決定します。

・貸し手の親は、土地建物に関する借入金の返済と固定資産税を賃料で充てます。

・貸し手の親は、不動産所得の確定申告をしなければなりません。親が消費税課税事業者の場合は、賃料に対して消費税が課せられます。

・賃貸借契約を必ず締結し、毎月賃料を支払います。

 

 「使用貸借」とは、親に少額の賃料または無料で医院を借りる方法です。親の借入金がゼロで、生活費にも困らない場合にこの方法を選択します。また親と同居している場合には、賃料を払ったとしても「使用貸借」になります。

■使用貸借のポイント

・賃料を払わない代わりに、固定資産税や維持コストを承継者である子が負担します。

・建物の簿価が残っている場合は、償却費を計上できます。

 

 医院そのもの(土地・建物)の3つの承継方法をご紹介しましたが、土地建物は高額になるため承継時のコストや運営方法以外に、親の相続も考慮した方法を選択することが大切です。財産状況を明らかにしてもらうことで、相続することになったときに問題が起きないようにしておきましょう。

 

② 医療機器 家具備品

 医療機器・家具備品でも医院そのもの(土地・建物)と基本的な考え方は同じです。「売買」「賃貸借」「使用貸借」のいずれかの方法を選択します。

 

 「売買」は、医療機器等が古く、簿価が少額である場合にまとめて売却します。承継時に古くて使わない医療機器は買い換えることがありますが、そのような物は引き継ぎません。親が消費税課税事業者の場合は、売買価額に対して消費税がかかります。

 

 「賃貸借」は、リースを組むようなイメージです。医療機器等が比較的新しく簿価が多額にあり、売買するには高額になる場合にリース料を設定します。親は雑所得として申告することになります。親が消費税課税事業者の場合は、賃料に対して消費税がかかります。

 

 「使用貸借」は、少額のリース料もしくは無料で貸すことです。親と同居している場合は、必ず「使用貸借」になります。減価償却費を引続き、計上できます。

 

③ リース資産・リース債務

 リースは、その医療機器等が必要な物であれば、契約を引き継ぎます。不要なものでリースを解約する場合には、契約によっては残りの期間リース料を一括して支払わなければなりません。借金と同じと考えておきましょう。

 

④ 診療材料・消耗品

 承継時に、診療材料・消耗品などの在庫数と購入単価を調べる棚卸をしましょう。その棚卸額で贈与もしくは売買することになります。

 

⑤ 従業員と雇用関係

従業員との雇用関係は、退職と入社を行うこととなります。親の代で退職、ご自身の代で入社となります。雇用条件を見直す良いタイミングです。一方的な雇用条件の変更は法律に違反する恐れがあるのはもちろんのこと、揉め事の火種になることは間違いありませんので、社会保険労務士に相談しながら進めていきましょう。

 

⑥ 駐車場等の賃貸借契約

 パーキングの契約をそのまま引き継げる場合と、新たに契約を結び直して敷金礼金が請求されたり、賃料の変更を要求される場合もあります。言いなりにならず、しっかりと交渉しましょう。

 

いくつかの方法をご紹介しましたが、残念ながらパッケージ化できる方法はありません。親子間の資産債務の状況や課税関係を総合的に勘案してコストが安く済む方法を選択することが、まず承継を成功させる大きなポイントです。そのためには、税法に詳しく実績のある税理士に医院の資産・負債の承継方法について、確かな分析と提案を依頼されることをおすすめします。

 

 親子間での承継する方法と課税関係については以上です。

4.医療法人を承継するとは?

 次に医療法人を承継することについて触れておきます。

 医療法人の承継とは、医療法人の意思決定権者(社員)と出資持分を新たに所有することをいいます。医療法人は、いくつか種類があり、各々で承継の方法が違います。ここでは、「経過措置型医療法人」と呼ばれるものと「基金拠出型医療法人」と呼ばれるものについて解説していきます。

 

 経過措置型医療法人とは、平成19年3月以前に設立された医療法人のことです。日本にある大部分がこの法人です。この医療法人を承継する場合は、社員になることと出資持分を取得することが医療法人を承継したことになります。社員になること自体は難しくないのですが、出資持分を取得することは資金と税金が必要となる場合があります。

 それは医療法人の利益の蓄積が多額にあって持分が高額になっている場合です。長年かけて医療法人で医院を経営していますと、利益が蓄積していきます。年間に利益が400万円あるとしたら20年経てば8000万円の利益が蓄えられていることになります。これが出資持分の価額が高額になってしまう大きな要因です。これを購入するか、もしくは贈与しようとするなら多額の資金と税金が必要となるわけです。出資持分の評価方法は、別の記事で詳しく紹介していますので参照してください。

 

 基金拠出型医療法人は、平成19年4月以後に設立された医療法人のことです。平成28年時点では、まだ8年しか経っていませんので、この医療法人を引き継いでいる例は少ないようです。経過措置型医療法人と同じで社員になることは同様ですが、基金を引き継ぐところが異なります。基金とは、出資持分と大きく違い、医療法人持っている利益があるからといって基金は高額にはなりません。基金は設立当初に500万円出されていれば、500万円の価値しかありません。医療法人に利益が5000万円貯まっていても500万円で承継することができるのです。これを承継するのは難しくなさそうですね。

 

 持分や基金を承継すると、医療法人を承継することになるのですが、資産・債務の状況も正しく把握しておくことが重要です。前述の承継するものの①から⑩が医療法人の中にあるからです。これを記録したものが、決算申告書や総勘定元帳です。税理士などの第三者のプロに分析してもらうと資産・債務の状況が手に取るようにわかるようになります。

 

5.保健福祉環境事務所や厚生局への手続きを忘れずに

 

 承継するときに忘れてはならないのは、管轄する保健福祉環境事務所や厚生局への手続きです。保健福祉環境事務所には、医療機関の開設・届け出事項変更・廃止などの手続きを行います。厚生局は、保険医療機関の指定・届け出事項変更・廃止などの手続きが必要です。個人と医療法人では提出する書類の種類が異なります。

 

【個人事業の場合】

 

■旧院長が手続きしなければならないこと

  • 保健福祉環境事務所へ

①診療所廃止届(廃止後10日以内)

②診療用エックス線装置廃止届(廃止後10日以内)

  • 厚生局へ

①保険医療機関廃止届

  • 税務署へ

①個人事業の開廃業等届出書(廃止後1ヶ月以内)

②事業廃止届出書(消費税)

③給与支払事務所等の廃止届出(廃止後1ヶ月以内)

 

■新院長の手続きが手続きしなければならないこと

  • 保健福祉環境事務所へ

①診療所開設届(開設後10日以内)

②診療用エックス線装置備付届(設置後10日以内)

  • 厚生局へ

①保険医療機関指定申請書(通常、保険診療を開始する前月の20日(遡及する場合を除く))

②保険医療機関遡及願(遡及できる場合に限る)

③各種、施設基準の届出(①と同じ)

  • 税務署へ

①個人事業の開廃業等届出書(開業後1ヶ月以内)

②青色申告承認申請書(開業後2ヶ月以内)

③青色専従者給与に関する届出書(開業後1ヶ月以内)

④給与支払事務所等の開設届出書(開業後1ヶ月以内)

⑤源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

 

【医療法人の場合】

 

  • 法務局へ・・・・・・・・・・・・・・理事長変更の登記
  • 保健福祉環境事務所へ・・医療法人役員変更届
  • 厚生局へ・・・・・・・・・・・・・・届出事項変更届
  • 税務署へ・・・・・・・・・・・・・・異動届出書

 

 上記のように個人事業の場合は、旧・新院長が開廃業の手続きをすることになりますが、医療法人の場合は、医療法人自体は変わらず理事長が交代だけですので、変更の届出で済みます。承継のために医療法人にするところがあるのはこのためです。突然の院長死亡による承継についても同じく、少ない手続きで行うことができます。

 

最後に

 

以上、承継開業について知っておきたい4つのことをご説明してきました。ここでは、一般的な承継時のポイントを書きましたが、実際の承継はもっと複雑です。お一人で悩まず、税理士やメーカーディーラーの担当者、銀行の担当者など外部の知恵や力も借りながら、承継を成功させましょう。

 もっと詳しく知りたい、承継開業について的確なアドバイスをご希望の方はご相談を随時お受けしておりますので、ご遠慮なくお問い合わせください。

 

 


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