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2016/04/28

医療法人解散時の知恵と対策

1.はじめに

平成19年春以降に設立された医療法人の場合、後継者がいないとき、あるいは第三者でも継ぐ医師がいないときは、医療法人に残った財産は国などに没収されます。第5次医療法改正で、「残余財産の帰属先の明確化」が重要なポイントとなりました。そもそも、医療機関は公的な機関であって営利団体ではありませんから、必要以上に利益が出れば国民に返すという考え方は当然ともいえるのかもしれません。しかし、国に没収されない方法ってあるのでしょうか?今回は、その対策について考えてみましょう。


2.解散時に剰余金は国に没収

第5次医療法改正によって、平成19年4月以降に新しくに設立された医療法人は、基金を集めて設立するという形になりましたので、その帰属先は国や地方自治体になりました。よって、その医療法人を譲渡しようとするとき、解散清算しようとするとき、残った財産は基金拠出者に分配できず、それらも国や地方自治体に帰属することになります。

つまり、後継者がいなく、高齢や病気などでやむなく医療法人を解散する場合、出資者の出資分を超えた剰余金は国に没収されてしまうというわけです。

具体例をあげて説明しますと、医療法人設立時の出資金が2,000万円、解散時の純財産が5,000万円の場合、国に没収される財産は、純財産5,000万円から出資金2,000万円を差し引いた剰余金3,000万円という計算になります。この場合、解散により出資者へ2,000万円は設立時の出資分として払い戻しされますが、長い期間をかけて法人に利益を蓄積された剰余金3,000万円は残念ながら すべて国に没収されてしまいます。

医療法人の経営者は、それまで努力して利益を出しても結果として「国に没収されるなんて、堪ったもんじゃないよ」という先生方もいらっしゃるかもしれません。

ここでのポイントは剰余金の3,000万円です。これを解散時に出資額以上の財産を残さなければいいのです。

それでは、どのように剰余金を残さないようにするのか。その方法としては、退職金で剰余金を減らすことです。出資金を割り込まないようにして剰余金が残らないように退職金として支払います。

このように後継者(子供)がいない場合や第三者でも継ぐ医師がいない場合に医療法人に残った財産は国に没収されますので、将来このような事態を招かないために、その対策を今のうちからしっかりと考えておきましょう。まず、後継者を育てる、後継者を見つけておくことです。医療法人にしておけば、理事長変更の手続きだけで済みます。そうすると、解散はしなくて済みます。次に理事長の特権である退職金を大きく作っておくことです。長期的な計画から節税対策をしておけば、たとえ解散するようなことになっても経営者の手元に利益を残すことはできます。


3.財産確保のための対策は?

医院の規模などによって財産確保の手段はいろいろとありますが、いちばんの方法は、解散時に医院に利益を残さないことです。

常套手段として、法人保険などを使った退職金対策や一般社団法人を設立して資産を移す方法、その他にもさまざまな手法がありますが、これらは医院の規模や経営者の家族構成や資産状況などによって、医院ごとに取るべき対策があります。

一例として、法人保険をあげますと、医療法人契約でスタートし、保険料を損金として落としながら、数年後に医療法人として貯めていた解約返戻金を医師個人が直接受け取ることができる商品があります。受け取る個人は医院を退職する必要はありませんし、税制面での優遇措置があるため安い税率で解約返戻金を受け取ることができます。この保険の活用によって、法人から個人へ所得を出すことで実質的な役員報酬を上げることができます。退職せずに毎年退職金をもらえるような効果として法人から個人に資産を移していくことができます。

このようなアドバイスをしてくれる専門の会社や税理士などに相談されることをおすすめします。

尚、第5次医療法改正前(平成19年4月よりも前)に設立された医療法人の中で、いわゆる持分有りの医療法人の場合は、医療法人に残った財産は最終的には出資持分に応じて、出資者に分配することができます。つまり、国や地方自治体に没収されるというようなことはありません。


4.まとめ

「閉院する時に残余財産があれば国に没収される。これまでがんばって診療して貯めてきた利益を国が没収するなんてあんまりだ!」ということで、医療法人にはメリットはないと誤解されている先生方も多くいらっしゃいます。医療法人は事業の継続を前提としていますし、後継者対策がしっかりとなされていれば解散することもありませんし、閉院しなければ利益を没収されることもありません。信頼のおける税理士と膝を交えて相談されて、上手に計画的に残余財産を残さないようにすればリスクを回避することができます。このことは、いま個人事業を営まれている先生で、医療法人化を検討されている先生にも知っておいてほしいことです。お一人で悩まず、税理士やメーカーディーラーの担当者、銀行の担当者など外部の知恵や力も借りながら、しっかりと対策を講じておきたいところですね。もっと詳しく知りたい、的確なアドバイスをご希望の方はご相談を随時お受けしておりますので、ご遠慮なくお問い合わせください。

また、当サイト内に、医療法人のメリット・デメリット、個人クリニックと医療法人の違いなど、法人化を目指す方にはとても役に立つ情報が綺麗にまとまったページがございますので、法人化をご検討の方は以下のリンクからぜひご覧ください。


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