税務調査の現在地:AIとデータが変える調査の「常識」
1. 調査は「勘」から「データ」へ
税務調査と聞くと、税務署の職員が突然会社にやって来て、分厚い帳簿をめくるイメージがあるかもしれません。しかし、今の税務調査は劇的に変化しています。最大のキーワードは「デジタル化(DX)」と「効率化」です。
国税庁は、納税者が提出した申告書だけでなく、銀行口座情報、取引先からの支払調書、不動産情報、海外送金記録など、あらゆる情報をKSKシステム(国税総合管理システム)に集約しています。KSKシステムは、個人・法人にかかわらず、税金に関する申告書や納税の情報が記録され、全国の国税局や税務署で共有されています。税務署では、これらの記録を分析することで、滞納整理などのさまざまな業務に利用しています。
これらの膨大なビッグデータをAIが解析し、同業他社と比較して利益率が異常に低い、急に高額な資産を取得しているなど、「申告漏れの可能性が高い納税者」を高精度で自動抽出しています。つまり、調査が入る時点で、税務署は既に「あなたの会社の怪しい点」を具体的に把握している可能性が高いのです。調査の対象者を選定の情報源のひとつがKSKシステムであり、税務調査の対象者の選定に大きな影響を与えることは否定できません。
2. 電子データは「改ざんできない証拠」
実地調査に入った際、調査官が最も重視するのはもはや紙の帳簿ではありません。チェックの対象は、会計ソフトのデータ、POSレジのログ、電子メールやチャット履歴など、会社のPCやサーバー内の電子データです。
特に、会計ソフトの訂正・削除履歴や、ECサイトの売上データと帳簿の突合は徹底されます。デジタル時代において、取引の痕跡は必ずデータとして残ります。このデータは、取引の真実を語る「改ざんできない証拠」として扱われるため、日頃からデータの適正な保存と管理が極めて重要になっています。
3.「来ない」調査が増えている
訪問する実地調査の件数は絞られる傾向にありますが、その代わりに増えているのが「簡易な接触」です。
これは、申告誤りがデータで明確な場合に、職員が訪問せず、電話や文書、または来署依頼を通じて是正を促す手法です。この手法は税務署側のコストが低く、効率的に税金を徴収できるため多用されています。簡易な接触であっても、既に明確な根拠に基づいた指摘であるため、決して軽視できません。
また、インボイス制度への対応や、富裕層の暗号資産(仮想通貨)取引、海外資産に関する申告漏れへの監視も、重点的に強化されています。
4. 経営者が今すべきこと
税務調査の最良の対策は、「いつでも調査に来られても大丈夫」な体制を日頃から整えることです。
•デジタル管理の徹底:会計ソフトのデータやログを含め、電子帳簿保存法に従い、適切にデータを管理し、改ざんをしないこと。
•実態に即した申告:特に副業収入やデジタル取引など、新しい収入源も含め、取引の実態を正確に反映した申告を行うこと。
現代の税務調査は、スピード、精度、そしてカバー範囲が大きく向上しています。最新の動向を理解し、専門家(税理士)の力を借りて適正な申告を行うことが、事業を守る最大の防衛策となります。
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