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2023/01/17

有給休暇の買い取りは違法ですか?

1.はじめに

有給休暇の目的は、「賃金を控除することなく休暇を与えて、労働者の心身の休養を図ること」です。有給休暇を買い上げてしまうと、労働者は休暇を取得し心身の疲労を回復することができなくなってしまいます。そのため、有給休暇を買い取ることは原則、労働基準法により禁止されています。


2.労働者から有給休暇の買い取りを求められたら?

労働者側から、有給休暇の権利を行使しない代わりに買い取りを求められたとしても、心身の休養を図ることを目的としている以上、使用者側が買い取りに応じることはできず、応じる義務もありません。


3.有給休暇の買取りができる場合

有給休暇の買い取りは基本的にはできませんが、例外として買い取りできるケースがあります。

①時効消滅の日までに消化しきれかった場合

労働者が有給休暇を使用せずに、時効となって消滅した分を買い取ることができます。

有給休暇には時効があり、付与日から2年を経過すると消化できずに余ってしまった有給休暇は消滅してしまいます。消滅してしまった有給休暇は取得することができないため、買い取ったとしても、労働者の有給休暇の取得を妨げることにはならないからです。

ただし、使用者側に消化できない有給休暇を買い取る義務はなく、買い取りが可能なのはあくまで使用者側が任意に応じた場合となります。

②法定外の有給休暇制度がある場合

法律で付与することが定められている有給休暇とは別に、独自の制度として特別の有給休暇(私傷病休暇、誕生日休暇等)を上乗せして付与していることがあります。上乗せ付与された法定外の有給休暇は、労働基準法の買い取り禁止の対象外と考えられているため、買い取り条件について制度としてあらかじめ規定しておくことも可能です。

例えば、労働基準法上10日の有給休暇が付与された労働者に対して、使用者側が上乗せして2日の特別有給休暇を与えていた場合、法定分を超える2日分について買い取ることは違法ではありません。

③退職の日までに消化しきれなかった場合

労働者が退職の日までに消化しきれなかった有給休暇を買い取ることができます。
退職後は、労働者が有給休暇の取得時季を指定する権利を行使することができないためです。なお、退職時の買い取りであっても制度としてあらかじめ規定しておくことは、有給休暇の取得を妨げることに繋がるため、好ましくないとされています。


4.退職時に、有給休暇をまとめて消化してもいいのでしょうか?

有給休暇の取得は労働者の正当な権利行使である以上、拒否することはできません。また、退職日も決まっているため退職日後に取得日をずらすわけにもいかず、使用者側は時季変更権を行使することもできません。

しかし、退職時において引継ぎ等業務上の必要から、有給休暇をまとめて取得されると困る場合もあります。このような場合、使用者側が労働者に対して有給休暇を買い取る代わりに、退職日まで勤務してもらうことを要請されることがあります。この要請に対して、労働者が任意に応じた場合は問題ないのですが、使用者側が出勤を命じることはできないので注意が必要です。


5.有給消化義務5日分の買い取りはできるのでしょうか?

平成31年4月1日より、年間10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、その内5日については付与日から1年以内に必ず消化させる事が義務付けられています。この5日分について買い取りにより消化させることは認められていないので、1年間の消化期限間近になって慌てなくて済むように余裕をもってあらかじめ取得する時季を決めておきましょう。


6.まとめ

有給休暇の買い取りについて、法律と実務の観点からご案内させていただきました。買い取りをする場合は、生活の質を高め労働意欲の向上を目的として労働者の健康面に配慮しつつ、福利厚生の一環としてバランスよく取り入れていかれると良いでしょう。



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