お問い合わせ
                 
クリニック経営ナビは、医科(病院・クリニック)・歯科専門の税理士による情報サイト
メニュー
閉じる
2025/06/10

相続対策で重要な遺留分って何?

1.はじめに

今回は、相続において重要な権利である「遺留分」について解説いたします。
先生方におかれましては、ご自宅の不動産や金融資産のみならず、医院不動産、医療機器などの事業用資産等、また医療法人であれば出資持分(持分あり医療法人の場合)も相続財産となりますため、相続と事業承継が複雑に絡み合い、遺産分割が難しくなりがちです。

•医療法人の持分を長男に集中させたい。
•後継者となる子に医院を承継させたいが、他の相続人にも相応の財産を渡したい。

などお考えの先生もいらっしゃるかと思いますが、相続対策を検討する際は、遺留分を考慮しておかないと、予期せぬ形でご家族間の争いが生じる可能性も否定できません。

2.遺留分とは?

遺留分とは、亡くなった方(被相続人)の財産のうち、一定の相続人に対して民法で保障された、最低限度の取り分のことです。
被相続人の
•配偶者
•子、およびその代襲相続人(孫など)
•直系尊属(父母、祖父母など)

には、残されたご家族の生活を保護する、という考えに基づき、遺留分が保障されています(兄弟姉妹は遺留分なし)。

遺留分の割合は、法定相続人の構成によって異なります。
相続人 遺留分
配偶者と子 配偶者1/4 子1/4
配偶者と直系尊属 配偶者1/3 直系尊属1/6
配偶者のみ 配偶者1/2
子のみ 子1/2
直系尊属のみ 直系尊属1/3
兄弟姉妹 遺留分なし


3.遺留分侵害額請求権

遺留分を請求できるケースで、実務上多いのは、たとえば被相続人が「全財産を長男に相続させる」というような偏った内容の遺言書を残された場合です。いろいろな事情やお考えがあって作成したものと推察されますが、この場合、遺留分を有する他の相続人は、長男に対して、遺留分に相当する金額を請求することが可能です。この権利を「遺留分侵害額請求権」といい、請求できる期間は下記のいずれか早い方と定められております。

・相続開始(および遺贈・贈与があったこと)を知った時から1年以内
・相続開始から10年以内


4.遺留分対策

遺留分トラブル防止のための事前対策はいろいろありますが、一点だけご紹介しますと、遺言書の作成は非常に有効な手段となります。各相続人の取り分を、遺留分に配慮した上で具体的に指定し、付言事項に想いを記すことで、相続人間の無用な争いを防ぎ、円満な相続を実現しやすくなります。

5.最後に

遺留分は、相続人の権利を保護するための重要な制度ですが、その内容を十分に理解せずに相続対策を行うと、後継者への承継がスムーズに進まず医院の経営に支障をきたしてしまう可能性があります。
円滑な事業承継とご家族の未来のために、本稿が相続について改めてご検討いただくきっかけになりますと幸いです。


カテゴリー
キーワード
メール相談
メール相談
ページトップへ