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2024/01/29

相続登記の義務化を前に~相続手続きの再確認~

1.はじめに

TVや新聞などでご存じの方も多いかと思いますが、本年4月1日から相続登記が義務化されます。そこで今回は、いま社会的にも注目を集める相続登記について触れていきたいと思います。
 
これまで不動産を所有する方が亡くなった場合、相続登記をするかしないかは、相続人の任意でした。そのため、長年、相続登記がされず、所有者を特定できない不動産(「所有者不明土地」と言います。)が増加し、近年社会問題となっています。この所有者不明土地ですが、平成28年の国土交通省の調べでは、国土の約20%がこれに該当すると発表され、所有者不明土地が増加することで周辺の環境悪化、民間取引、公共事業が阻害されるなどの問題が生じ、これらを解消すべく、相続登記の義務化が決定されたのです。
それではここで、来たる相続登記の義務化を前に相続に関する手続きについて、ご一緒に再確認したいと思います。

 

2.相続人の調査・確定

相続が発生したとき、初めにすることは、法定相続人を確定させる(誰に相続権があるかを調べる)ことです。
法定相続人とは、亡くなった方(被相続人)の財産を相続する権利を有する人をいい、民法に定められた相続人を指します。

法定相続人になり得る人とは、①「配偶者」②「子」(実子・養子等) ③「直系尊属」(父母・祖父母)④「兄弟姉妹」です。(相続の順位及び相続分は後述します。)
注意すべきは、法定相続人の地位は「戸籍」に基づいて発生するということ。したがって、内縁の夫や妻は相続人にはなりませんし、逆に、前夫又は前妻との間に子供がいる場合には、その子供は相続人になります。また、条件にもよりますが、甥や姪が相続人となる場合(「代襲相続」と言います。)もあります。
この法定相続人の認定を誤ってしまうと、後述する遺産分割協議が無効になってしまいますので、専門家に依頼することをおすすめします。

 

3.相続の順位と法定相続分

法定相続分とは、被相続人が遺した財産に対して、それぞれの法定相続人が持つ権利の割合を取り決めたものです。
その相続分を基に、他の法定相続人に対し、自己の権利を主張することができます。しかし実際には、被相続人の遺した財産について、法定相続人の全員で遺産の分け方を話し合う(「遺産分割協議」と言います。)のが一般的です。

法定相続の順位と法定相続分については下記の表をご参照ください。


 

4.法定相続人の調査の方法

先述のとおり、法定相続人の地位は「戸籍」に基づいて発生します。
ここでは戸(除)籍等の取得方法を確認していきます。

①被相続人の「本籍地」の市区町村町で出生から死亡までの戸籍謄本等を取得する

※戸籍等は被相続人の「住所地」ではなく「本籍地」でしか取得することができませんので注意が必要です。また、本籍地を転籍されている場合には、転籍先の市区町村町にて取得します。本籍地が遠方の場合、郵送にて請求取得することができます。
なお、本年の3月1日以降は、戸籍謄本の広域交付制度を利用して、お住まいの地域と異なる場所にある本籍地の役所の戸籍謄本・除籍謄本も、一か所で取得できるようになるため、必要な戸籍をまとめて取り寄せることが可能になります。
ただし、請求できる方の範囲は、本人、配偶者、直系尊属、直系卑属に限られ、兄弟姉妹の方は請求できません。

②取得した戸(除)籍謄本等を基に法定相続人を確定させ、法定相続人に戸籍の取得を依頼する

 

5.相続財産の分け方

相続人が確定したら、遺産についてどのように分けるのかを検討します。
各種方法のメリット・デメリットも、併せて確認してみてください。

①法定相続分による相続

各相続人の相続分の割合で相続する方法

メリット
各相続人の相続分は法律で決められているため、手続きが比較的容易である。
デメリット
遺産に不動産がある場合に、法定相続分による相続登記を行うと不動産が共有状態となり、売却時の手続きが煩雑になったり、管理や処分方法を巡り意見が対立する可能性がある。

②遺産の分割方法の協議による相続(遺産分割協議)

遺産についてどのように分けるかを法定相続人全員で話し合い、その結果をもって相続する方法

メリット
法定相続分にこだわらず、「誰が、どのように、どの財産を取得するのか」を決めることができる。法定相続人の合意で決めることができる自由度の高い方法。
デメリット
法定相続人全員での協議が必要であり、法定相続人のうち一人でも合意しない場合には、効果が発生しない。また、相続人の数が多い場合や、居住地がわからない相続人、海外居住者や、外国籍の相続人がいる場合には手続きが煩雑化しやすい。

③遺言による相続

被相続人が生前、遺言書を作成することで、その遺言のとおりに相続する方法。

メリット
被相続人が、生きているうちに遺産の分け方を決めることができるため、法定相続人による協議などが不要で、相続手続きが比較的容易である。また、被相続人の最終意思を最大限尊重できることが一番の特長である。
デメリット
遺言の種類によっては、記載の要式に決まりがあり、それに沿わない遺言書は無効となる。また、家庭裁判所で遺言書を検認する手続きをする必要があるものや、作成に費用がかかるものもある。

 

6.相続の方法を決めたら、いよいよ財産を分ける手続き

最後は、いよいよ実際に財産を分けるための手続きです。財産の中に不動産があればその調査を行い、預貯金や金融商品の解約など、具体的な手続きを行います。先述した戸籍や遺産分割協議書、遺言書などは、このとき必要になる重要な書類ですので、誤りがあると受け付けてもらえません。

以上、相続手続きに関することを再確認しました。
今回は触れておりませんが、上記以外にも「相続放棄」や、「遺留分請求」など様々な手続きがありますが、これらについては、機会があればまたご説明したいと思います。

最近、相続登記の義務化のニュース等をよく見かけますが、まずはその根底にある相続手続きを改めて理解し、手続きを進めていくことが大切です。また、将来的には、社会の国際化や相続財産の多様性などによって、相続手続きは一層複雑化すると予測されます。このような変化に対応するためにも、法的なアドバイスや専門家のサポートを積極的に活用しながら、円滑な相続手続きを進めることをおすすめします。
相続手続きのお悩みは司法書士法人ハート・トラストにお気軽にご相談ください。

 
引用・参考文献
◆法務省: 戸籍謄本等の広域交付制度について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html


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