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2022/02/10

インボイス制度がクリニック経営に与える影響は?

インボイス制度,クリニック,消費税

1.はじめに

令和5年10月1日より消費税のインボイス制度が導入されます。今回は、インボイス制度導入による医療機関への影響について考察していきます。


2.消費税課税の仕組み

まずインボイス制度を理解するにあたって、消費税の課税のしくみを知る必要があります。
消費税の原則的な納税額の計算方法は以下の通りです。

納付税額 = 売上にかかる消費税 - 仕入にかかる消費税(仕入税額控除)・・・①

仕入にかかる消費税のことを仕入税額控除と言います(※ここで言う仕入とは、いわゆる売上原価に集計されるものだけでなく、経費の支払いや固定資産の購入等も含まれます)。令和5年9月まで、仕入税額控除を受けるための要件としては、消費税等について正しく記載された区分記載請求書等を保存することとなっています(区分記載請求書等保存方式)。しかし令和5年10月以降は、適格請求書等を保管することが要件となる適格請求書等保存方式(インボイス制度)に変わります。

適格請求書(インボイス)が区分記載請求書と最も大きく異なる点は、インボイスを発行できる事業者が「適格請求書発行事業者」に限られることです。適格請求書発行事業者の登録を受け、インボイスを発行できるのは、消費税の課税事業者のみです。免税事業者が発行することはできません。区分記載請求書は消費税の免税事業者でも発行することが可能であるため、ここが一番の違いとなります。

少し順番が前後してしまいますが、インボイス制度の影響を検討する上で、ご理解いただきたい点が他に2点あります。
まず1点目は、クリニックにおいて消費税の対象となる売上(課税売上)は主に、自費収入(※一部対象外あり)、物品販売、固定資産の売却などであり、保険診療収入は非課税となります。消費税の免税事業者となることができるのは、基準期間(前々年度などの対象期間)の課税売上高が1,000万円以下の場合です。

次に2点目としては、課税事業者が消費税の納税額の計算を行う場合、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合は、簡易課税制度を用いて納税額の計算を行うことができます(事前の届出要)。これは、①の計算を行う場合に、通常は取引ごとに仕入税額控除を抜き出して集計するのですが、簡易課税制度の場合は課税売上に対して一定の率の課税仕入があったものと「みなして」、課税売上高のみをもとに簡単に納税額を計算することができるものです。


3.インボイス制度の影響

それでは本題のインボイス制度の影響について、ケース別に考察します。

A.自院が免税事業者である

免税事業者の場合、自院は消費税を納める必要がありません。ただし、取引相手である患者が個人事業者や法人で、①の方法により消費税を納めている場合は、相手方がインボイスを受け取れないことで納付税額が増えることになります。想定される医療サービスとしては、健康診断や予防接種、治験など自由診療扱いとなるものです。免税事業者でありながら、このような収入が一定以上ある医療機関は、取引機会を失わないために、取引単価の見直しを検討するようなケースもあるかもしれません。

B.自院は課税事業者だが、簡易課税制度を採用している

この場合は適格請求書発行事業者としての登録を行えば、取引相手が事業者であったとしても、インボイスを発行することで相手方の仕入税額控除に貢献することができます。自院は簡易課税事業者ですので、インボイス制度がスタートしても、制度の変更による納付税額の増減はありません。このケースではインボイス制度の影響はゼロに近いと言えるでしょう。

C.自院の課税売上が5,000万円超である

この場合は適格請求書発行事業者としての登録を行うことで、取引相手にデメリットを生じさせることはありません。一方、自院の消費税の納付については、取引相手が適格請求書発行事業者の登録を行っていなければ、①の計算において仕入税額控除を受けることができません。そうなるとインボイス制度開始前よりも税負担が大きくなってしまいますので、支払先が個人事業や零細企業である場合には、制度開始以降の取引について何らかの検討が必要になるかもしれません。


4.最後に

以上のように、自院の状況によって受ける影響はさまざまです。皆様の医院はどのケースに当てはまるでしょうか。

また、これらの影響とは別に、個人資産を不動産管理会社やMS法人に売却する場合においても、インボイス制度開始前と開始後で大きく税メリットが変わる場合がありますので、詳しくは顧問税理士や弊社担当者にお尋ねください。


【アップパートナーズグループYouTube】
2023年3月8日公開
▼【令和5年度税制改正】インボイス制度はどう変わった?


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