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2025/11/04

知っておきたい融資の基礎知識と融資審査のポイント

1.はじめに

会社経営をするなかで重要な項目である『融資』。融資を受けられず苦い思いをした経験はありませんか?今回は、融資の基礎知識と実際に融資する側はどこに着目して審査をしているのかをまとめました。

2. 融資の基礎知識

融資の4つの形態

金融機関の融資形態は、主に以下の4種類があります。

1.証書貸付(長期):金銭消費貸借契約書を結ぶ方式で、期間は5~10年と長期が多く、設備資金や長期運転資金に使われます。

2. 手形貸付(短期):借入用手形を差し入れる形式で、期間は1年以内の短期が多く、期日一括返済が一般的です。賞与資金や納税資金など短期運転資金に使われます。

3. 当座貸越(短期):借入限度額(極度額)内で借入と返済を自由に繰り返せる形式で、融資の中で最も審査が厳しい形態です。
4. 手形割引:売上代金として受け取った手形を金融機関に買い取ってもらう形式です。


返済方法

返済といっても様々な返済方法があります。
事業融資では、ほぼすべてで元金均等返済が利用されています。

元金均等返済:毎月の元金返済額(利息を除いた返済部分)が均等である返済です。元利均等返済に比べて元金の返済スピードが早いため、返済総額が少なくなるメリットがありますが、利息分を加味すると返済開始当初の負担が大きくなるデメリットがあります。

元利均等返済:元金と利息の合算額が均等である返済で、主に自動車ローンや住宅ローンなどで利用されます。

返済原資

返済原資とは「返済するための元手」です。

手形貸付や当座貸越、手形割引など短期資金として融資を受けたものは、売上高を返済原資として考えます。
○例:3~6月は売上が上がらない時期だが、7月に大きく売上を確保できるため、3~6月分の運転資金を手形貸付で資金調達し、7月の売上で返済します。

長期資金として融資を受けた証書貸付は、キャッシュフローで返済することになります。
キャッシュフローの計算式は、『当期純利益+減価償却費』で表されます※特別利益、特別損失は除きます。

減価償却費を加算する理由は、「現金の支出を伴わない費用」のためです。
帳簿上は費用として計上され利益を減らしていますが、実際には現金が手元に残っているため、この現金を返済に充てられる原資として加算されます。
『年間キャッシュフロー>新規借入の年間返済額』となることが長期資金の融資を受ける第一歩となります。なお、既存の借入金返済がある場合は、『年間キャッシュフロー>新規借入の年間返済額+既存借入の年間返済額』となる必要があります。

○例:A社は当期純利益100万円(減価償却費300万円)の法人。長期運転資金1400万円(7年返済)を借りたいが他にも借入金の返済が年間100万円あるので融資を受けられるのか?
・キャッシュフロー400万円(当期純利益100万円+減価償却費300万円)
・年間返済額300万円(新規融資返済額200万円(1400万円÷7年)+既存100万円)

キャッシュフロー400万円>年間返済額300万円となり、返済余力ありと判断できる。

2. 融資審査のポイント

金融機関の融資審査は、定量評価(数字による評価)と定性評価(数字に表せない項目による評価)の2軸で行われます。中小企業の融資審査においては、定性評価が事実上の「1次評価」となります。

審査の第一関門:定性評価

定性評価では、まず社長の人柄や資質、そして「約束を守るか」といった誠実さが重視されます。金融機関は、社長の体と心の健康状態、社員の定着度合い、メインバンクとの友好的な関係など、数字に表れない部分を細かく見ています。

社長は企業の会計知識を理解し、決算説明の重要なポイント(売上高、経常利益、自己資本比率など)を自らの言葉で説明できる姿勢が期待されます。

審査の主要指標:定量評価

定性評価をクリアした後、決算書などの数字(定量評価)が詳細に分析されます。

1. 自己資本比率(安全性)
貸借対照表における総資本に占める純資産(自己資本)の割合です。純資産は会社設立以来、利益を積み重ねた「会社の努力の結晶」とも言え、この比率が高いほど「安全性の高い会社」と見なされます。純資産がマイナスになった状態を「債務超過」と言います。

2. 経常利益(稼ぐ力)
損益計算書にある利益の中で、金融機関が最も重視するのは経常利益です。これは、不定期な特別損益を除いた、会社の本業および経常的な活動から生じる「普段の稼ぐ力」を示すからです。

3. 債務償還年数(返済能力)
「借入金を何年で返済できるか」を示す指標です。計算式は「借入金 ÷ 返済するための元手」で求められます。

絶対に避けるべきこと:粉飾決算
貸借対照表や損益計算書の数値を改ざんしてよく見せる粉飾決算は、いつか必ず発覚し、資金繰りが厳しくても、粉飾ではなく正直に経営状況を開示し、メインバンクに相談することが重要です。金融機関は常に「疑いの目」を持って決算書類等を精査しています。

3.最後に

会社の命脈が尽きる最大の原因は「資金繰り倒産」です。これは、手元のお金がなくなって、仕入代金や社員への給与、借入金の返済などができなくなって倒産する事態を指します。この事態を避け、資金繰りの心配をなくすことが会社経営の大きな目標になると私達は考えています。

会社経営において、借入は「新たなお金を生み出す元手」と捉えるべきであり、経営を安定させるため、金融機関が貸したいと思っている「晴れの日」に、借りられるだけ借りておくべきとも考えられます。
「晴れた日に大きな傘を借り、雨が降ったらその傘で雨をしのぎ、晴れたらまた大きな傘を借りる」という姿勢が重要です。借りたお金をすぐに使う義務はなく、安全経営のための「お守り」として預金口座に置いておくことも良いと思います。


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