1.はじめに
医院の法人化は魅力的ですが、法人設立初年度に前年の個人事業所得に基づく「予定納税」が思わぬ負担となることがあります。これは、個人事業を廃止し法人を設立しても、個人の予定納税義務が引き継がれるためです。特に、個人事業時代に所得が多かった院長先生ほど、多額の予定納税が課され、資金繰りを圧迫する要因となり得ます。
2.予定納税とは?なぜ法人設立初年度に課されるのか?
予定納税は、所得税の確定申告において、前年の所得金額や税額が一定基準以上だった場合に、その年の所得税の一部を分割して納付する制度です。通常、年2回(7月と11月)に分けて納付します.
法人を設立した場合、税法上は個人事業と法人は全く別の存在として扱われます。そのため、個人事業を廃止し法人を設立した場合でも、個人事業主時代の所得税の予定納税義務はそのまま引き継がれます。法人設立初年度は、個人事業時代と比べて収益構造や経費の内訳が大きく変わることが一般的です。例えば、法人からの役員報酬や新たな法人運営経費の発生、事業拡大への投資などが挙げられます。これらの要因により、個人の所得が前年より大幅に減少する見込みがあるにもかかわらず、前年の所得に基づいて予定納税が課されると、実際の所得に見合わない過大な税金を支払うことになり、キャッシュフローを悪化させるため、予定納税の減額申請が必要となるのです。
3.予定納税の減額申請の方法
予定納税の減額申請を行うには、「所得税の予定納税額の減額申請書」を税務署に提出する必要があります。
1.申請書の入手:
国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、税務署で入手できます。
2.申請書の記入:
申請書には、その年の所得の見込み額や税額、減額を希望する理由などを具体的に記入します。
3.提出期限:
減額申請には提出期限が設けられています。
o第1期・第2期分の両方を減額したい場合:その年の7月15日。
o第2期分のみを減額したい場合:その年の11月15日。
4.まとめ
医院の法人設立は、長期的な経営戦略において有効な手段ですが、法人設立年の予定納税はキャッシュフローに大きな影響を与えかねません。個人事業から法人への移行に伴う所得の変化を正確に見込み、適切な時期に予定納税の減額申請を行うことで、不必要な資金流出を防ぎ、法人化後の経営をスムーズに進めることができます。
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