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2025/11/21

住宅取得等資金贈与の非課税措置と他制度の併用

1.はじめに

子や孫がマイホームを取得する際に、まとまった資金を援助したい、と考える方は多いかと思います。その際に活用できる代表的な制度が「住宅取得等資金贈与の非課税措置」です。
この制度は、令和6年度の税制改正で適用期限が令和8年12月31日まで3年間延長されました。さらに、この特例は暦年贈与(年間110万円の基礎控除)や、令和6年から新設された基礎控除(110万円)がある相続時精算課税制度とも併用が可能です。

賢く組み合わせて活用することで、非課税で贈与できる金額を大幅に増やせる可能性があります。

2.制度概要

主な内容は、下記の通りです。

非課税限度額

【省エネ等住宅※】 1,000万円
【上記以外の住宅】 500万円
※「省エネ等住宅」とは省エネ性能要件がZEH水準(断熱等級5以上かつ一次エネ等級6以上)などの要件を満たす物件で、住宅性能証明書などの証明書類が必要となります。

主な要件

・あげる方:父母や祖父母などの直系尊属
・もらう方:18歳以上、合計所得2,000万円以下(床面積が40㎡以上~50㎡未満の場合は1,000万円以下)など
・住宅:床面積40㎡以上240㎡以下、贈与を受けた年の翌年3月15日までに入居 など|

3.活用方法

この特例と、暦年贈与や相続時精算課税制度を併用することで、非課税枠を大きく広げられます。

①暦年贈与(110万円)と併用する場合

例えば、父から「省エネ等住宅」の資金として1,000万円の贈与を受けた年に、同じ父から暦年贈与として110万円の贈与を受けることができます。

・住宅資金贈与特例:1,000万円
・暦年贈与の基礎控除:110万円
・合計:1,110万円まで、その年の贈与税が非課税となります。

②相続時精算課税制度と併用する場合

相続時精算課税制度を選択した場合、その非課税枠(基礎控除110万円+特別控除2,500万円)と併用できます。
例えば、父から「省エネ等住宅」の資金として3,000万円の贈与を受けた場合、

・まず住宅資金贈与特例の1,000万円を適用します。
・残りの2,000万円に対し、相続時精算課税制度の基礎控除110万円と特別控除1,890万円(2,500万円の内枠)を適用します。
・この場合、贈与税はかかりません。最大で合計3,610万円(1,000万円+110万円+2,500万円)までの非課税枠を活用できます。

なお、通常、相続時精算課税を使用する場合は、あげる方が「60歳以上の父母または祖父母」であることという要件がありますが、住宅取得等資金贈与の特例と併用する場合は、60歳未満でも相続時精算課税による贈与を行うことが可能です。

4.注意点

①適用要件が複雑

もらう人(受贈者)の年齢や所得制限、取得する住宅の床面積や入居期限など、細かな要件が多数あります。特に省エネ等住宅の基準は厳格化されているため、住宅の仕様を事前に確認することが不可欠です。

②非課税でも「申告」が必須

この特例を適用して贈与税が0円になる場合でも、必ず贈与を受けた年の翌年3月15日までに、必要な書類を添付して贈与税の申告をしなければなりません。申告を忘れると、特例が適用されず多額の贈与税が発生する恐れがあります。

③将来の相続への影響

相続時精算課税制度を併用した場合、基礎控除110万円と住宅特例(1,000万円または500万円)を引いた残りの贈与額(特別控除2,500万円部分及び超過額)は、将来の相続時に相続財産に加算されます。

5.まとめ

住宅取得等資金の非課税措置は、子や孫のマイホーム取得を力強く後押しできる、非常に有効な制度です。さらに、暦年贈与や相続時精算課税制度と組み合わせることで、その効果を最大化できます。
しかし、適用要件が複雑で、申告も必須です。また、将来の相続税対策との兼ね合いも慎重に検討する必要があります。実行する前に、必ず顧問税理士などの専門家とよくご相談ください。


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