相続に関する法改正で気をつけたいこと
1.はじめに
相続に関して自分が当事者になるという機会はそう多くあるものではありません。
近時、民法が改正されて不動産について「相続登記が義務になった」「住所の変更登記もしないと罰金がかかるって」という情報はよく耳にするようになり、皆さんも意識が高くなっていると感じるようになりました。
実際に私の事務所(司法書士法人ハート・トラスト)にも「今住んでいる家は亡父の名義になったままだけど、今度から罰金がかかるって聞いたんだけどすぐに変更したい」というご相談が増えています。本日は、「相続に関する法改正で気をつけたいこと」についてお伝えいたします。
2.相続登記が進まない原因とルールの変更
これまでの不動産登記のルールとして、登記をするかどうか?については当事者の自由に任されてきました。登記をすれば、登録免許税や司法書士に頼めばその手数料も払わなければならず、現実に困らなければ「しない」という選択をする方も多くいました。
例えば、お金を出して不動産を購入したような場合は、登記の名義を変えないと悪い売主が別の人にも不動産を売ってしまって名義を変えられるリスクを伴うので、ほぼ100%名義を変更します。
しかし、亡親名義の不動産は、相続人同士の仲がよければ、名義を変えなくてもすぐには問題は起きません。(但し、何代にも渡り相続が発生すると、いざ名義変更という場面で相続人関係者が増えて大変な苦労をすることになります)
そのため、登記をしなくても固定資産税さえ払ってさえいれば、居住したり使用したりするにも困ることはありません。
そして、これまでに起こらなかった大災害の発生と一日も早い復興の実現という場面で政府は土地の所有者がわからないことで復興が進まないという現実に直面したのです。
このことをきっかけに、不動産の所有者が誰なのか?を登記で明らかにするために「相続登記義務の3年ルール」「住所、氏名の変更登記義務の2年ルール」を設けたのです。
3.相続に伴う特別受益と寄与分の主張に関するルールの変更
あまり大きく取り上げられていない部分だと思いますが、相続人の間での不公平を修正するための「特別受益※1」や「寄与分※2」の主張に10年の制限ルールが設けられました。(2023年4月1日から)
この10年ルールは、相続開始後10年経過したら、その後に行われる遺産分割協議において特別受益や寄与分の主張が法律上認められなくなるのであって、相続人間で特別受益や寄与分を考慮した上で遺産分割協議をすることは出来ます。この遺産分割協議には10年ルールはありません。
※1「特別受益」
主張ができるのは、贈与等をうけていない相続人
例えば、長女が父から住宅建築のための費用1000万円を生前贈与を受けていたような場合、他の生前贈与を受けていない相続人はこの贈与を特別受益(相続分の先取り)であることを主張して、長女の受取る相続財産をは少なく(1000万円分の調整)することができますが、今回のルール改正により、相続開始から10年を経過すると特別受益の主張ができなくなる期限を設けました。
※2「寄与分」
主張をできるのは、被相続人の財産の増加維持に寄与した相続人
例えば、長男が父の病気の看護や介護のために時短勤務が可能な職場に転職して、長期にわたり自宅で面倒をみたような場合(介護施設に入所が困難、父からの金銭援助の有無などの事情も考慮される)その介護によって、父の財産が維持(減らなかった)された場合、長男は他の相続人よりも多く財産を相続する「寄与分」の主張をすることができますが、この主張についても、相続開始から10年を経過すると主張が出来なくなります。
このルールについては、施行日(2023年4月1日)より以前に発生した相続についても適用されるので注意してください。
しかし、すでに相続開始から10年を経過してしまっている相続については、5年の猶予期間(2028年3月31日まで)が設けられていますので、相続開始から10年もしくは、22028年3月31日までのどちらか遅い方が期限になります。
※10年ルールの例外
相続開始の時から10年経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたときや遺産分割請求できないことにやむを得ない事情がある場合には、10年経過後も主張が可能な場合もありますので、専門家相談しましょう。
4.最後に
いかがでしたでしょうか。相続に関する法律は複雑なため、専門家でないと判断が難しいものが多いです。生前対策や相続税についてのご相談はアップパートナーズグループでお受けしておりますので、何か心配事のある方はお気軽にご相談ください。
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