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2025/12/08

社員旅行の非課税要件と最近の動向

1.はじめに

医療機関の経営において、職員の福利厚生や勤労意欲の向上は、安定した医療提供体制を維持するための重要課題です。その一環として行われる社員旅行の費用負担について、従業員への給与課税を避けるためのルールをご紹介します。

所得税の基本通達では、企業が役員や従業員のために負担するレクリエーション費用について、「社会通念上一般に行われていると認められる」ものに限り、原則として課税しなくて差し支えないとされています。これは、従業員が受ける経済的利益が少額であり、強いて課税することが適当ではないという趣旨に基づいています。

2.非課税要件の「原則」と「留意点」

社員旅行の費用が非課税となるための基本的な要件は以下の二点です。

1. 旅行期間

4泊5日以内であること(海外旅行の場合は、海外での滞在日数が4泊5日以内)。

2.参加割合

旅行に参加した従業員等が全体の人数(または工場・支店等の単位)の50%以上であること。

これらの要件のうち一つでも満たさない場合、原則として給与課税の対象となります。例えば、旅行期間が5泊6日となり、参加割合が50%であった事例では、旅行期間が超過したため給与課税の対象とされています。

また、旅行に参加しなかった従業員に金銭を支給したり、旅行と金銭の選択肢を与えたりする行為は、レクリエーション旅行とは認められず、給与課税の対象となるため注意が必要です。

3.参加割合50%未満でも非課税となる「例外」

特に注目すべきは、近年の税務の動向です。国税庁が公表した事例では、参加割合が38%であったにもかかわらず、給与課税の対象外と認められたケースが存在します。

これは、単に「38%を確保すれば大丈夫」という意味ではありません。当該事例の旅行が非課税とされたのは、以下の要素が総合的に勘案されたためです。

* 目的・趣旨: 会社の福利厚生規程に基づき、全従業員を対象に参加者を募集し、社内の親睦と従業員の勤労意欲向上を目的としていた。
* 頻度: 年に1回行われるものだった。
* 内容の総合的判断: 旅行の内容が社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行と認められ、従業員が受ける経済的利益が少額であると認められた。

つまり、参加割合が50%に満たなくても、「福利厚生目的が明確であること」「全職員への周知・募集が行われていること」「私的な目的ではないこと」など、旅行の内容全体が社会通念上のレクリエーションとして妥当であるかどうかが重要になります。

4.医療機関が留意すべき総合的な判断

税務上の判断は、あくまで旅行期間、参加割合などの形式的な要件だけでなく、以下の要素を総合的に勘案して行われます。

•旅行の企画立案・主催者(会社主催であるか)
•旅行の目的・規模・行程(私的な旅行ではないか)
•使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合(従業員以外の家族分を負担していないか)

特に、以下のケースでは非課税扱いとはなりません。

•役員だけを対象とする旅行。
•不参加者に金銭を支給する場合。
•実質的に私的旅行と認められる場合 。
•金銭との選択が可能な旅行。

実施する社員旅行が、形式的な要件に加えて「福利厚生規程」に基づき、「全従業員を対象」とした社会通念上妥当な範囲のレクリエーションであることを明確に証明できるよう、記録と規程を整備しておいた方が良いでしょう。


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