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2023/08/31

海外への視察などで出張した際の経費の取り扱いはどうなる?

1.はじめに

コロナ禍もひとまず落ち着きを見せ、私的な旅行はもちろんですが、研修や新しい技術の視察などで海外へ行く機会も徐々にですが増えてきているようです。
そこで今回は税務調査で度々問題となる海外渡航費の取り扱いについて、税務署がどのように経費性の有無を判断するのかを見ていきたいと思います。


2.法人税基本通達には何と書いてある?

まず「法人税基本通達9-7-6海外渡航費」には下記のように記載があります。

法人がその役員又は使用人の海外渡航費に際して支給する旅費は、その海外渡航が当該法人の「業務の遂行上必要なもの」であり、かつ、当該渡航のための「通常必要と認められる部分の金額」に限り、旅費としての法人の経理を認める。

要するに業務上必要な経費で妥当な範囲の金額であれば認めますよ、ということなのですが、では業務の遂行上必要なものの判断を税務署はどのように判断するのでしょうか?
実はその判断についても法人税基本通達に記載されています。

「法人税基本通達9-7-7業務の遂行上必要な海外渡航の判定」
法人の役員又は使用人の海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであるかどうかは、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定するものとする

「総合勘案して~」と言われてもピンとこないですが、「旅行先や旅行経路などが旅行の目的と照らし合わせて本当に会社の業務上必要なものなのかを判定する」ということです。
そこで、実際に税務調査の際に「これこれこういう目的で、あの場所へ業務の一環として行ったのです。」と説明すればいいのか、と思いますが、そう簡単にはいきません。実際の税務調査の場面ではどれだけ口頭で説明しても、「(口ではどうとでも言えますよね。)では仕事で言ったと説明できる資料を提示してもらえますか?」と言われます。
実際に仕事で行っていたのだとしても、海外滞在中全てが仕事だったのか、プライベートな部分が混同されていないかという視点で税務調査官は見てきますので、客観的に判断できるような書類を求められます。ですので海外渡航に関する書類を日頃から備えておき提示できるようにしておくことが重要です。

海外出張旅費規程や海外出張旅費精算書は最低限必要です。ネット上で検索すれば無料で雛形など簡単に取得できます。ただし、自院の現状と合っていない内容も含まれていることがほとんどですので、内容をしっかり確認し、必要があれば自院に適した内容に加筆訂正をすることをお勧めします。


3.何が海外研修の証拠となるか?

また、海外出張で問題となるのはその旅行の目的です。仕事として行った証拠として写真を資料として撮っているケースもあります。あるに越したことはないですが、単に視察や研修先での写真だけでは業務上の必要性を示すのは厳しいようです。詳細は割愛しますが、建築士が建築設計の視察の為として行った旅行では、設計の参考として建物を撮影したとされた証拠書類の写真に対し、一般的な観光ルート上で建物の写真を撮っている程度に過ぎず、実態は観光旅行と判断され業務必要性、関連性は認められないといった判決事例があります(岡山地裁昭和47年2月3日判決(Z065-2849)。

研修や視察旅行で海外に行った際には、その旅行の目的、工程がわかる関連資料(研修時の冊子やパンフレット)や旅程表などを備え、経費にする際には私的な部分があれば経費から除外しましょう。せっかく海外に行くのですから業務に関係ない事もしたくなりますし、実際するケースは多分にあると思います。
そういった場合は厳密に時間を集計して分けるのも良いですが、全行程の何日、もしくは何割がプライベート旅行部分かで按分するなど合理的と思われる方法で区分することもできます。


4.まとめ

本当に仕事として行っているのに、税務調査時に「本当に仕事で行ったのか」などと疑われ、説明をするのは気分も害しますし、時間が経っているほど記憶も曖昧になり、資料の準備などに余計な労力を要します。国内出張も同様ですが、出張や経費精算に関する規定を備え、運用することをお勧めいたします。


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