マイカー通勤手当の非課税限度額が引き上げられました
1.はじめに
令和7年11月19日、所得税法施行令の一部を改正する政令が公布され、通勤のためマイカー等を使用している給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。この改正内容は、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用することになっているので、今年度の年末調整では注意が必要です。
2.改正後の非課税限度額
改正後の1ヶ月あたりの非課税限度額は、次の通りです。
改正になったのは、②自動車・自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当です。
各通勤距離の区分は変わらず、片道「10km以上15km未満」から「55km以上」の各区分の非課税限度額がそれぞれ引き上げられました 。「片道2km以上10km未満」 と 「2km未満」の区分での改正はありません。また、①、③等の「交通機関又は有料道路を利用している従業員に支給する通勤手当」 、「交通機関を利用している従業員に支給する通勤用定期乗車券」等については、この金額の改正はありません。
3.適用時期について
この改正は令和7年4月1日以後支払われるべき通勤手当に遡り適用されます。「令和7年4月1日以後に支払われるべき」とは、契約又は慣習等により支給日が定められているものは支給日、支給日が定められていないものは支給を受けた日がそれぞれ令和7年4月1日以後であるものをいいます。
なお、下記①~③に該当するものは対象となりません。
①令和7年3月31日以前に支払われた通勤手当
②令和7年3月31日以前に支払われるべき通勤手当で同年4月1日以後に支払われるもの
③①または②の通勤手当の差額として追加支給されるもの
非課税限度額の引き上げは遡って適用されるため、同日以降に支払われるべき通勤手当において改正前の非課税限度額を超えて源泉徴収(課税)されたものがある場合には、本年の年末調整で精算します 。改正前の非課税限度額の範囲内で支給していた通勤手当については、年末調整の対応は不要です 。また、片道10km未満の区分の非課税限度額等は変わらないため、こちらも対応は必要ありません 。
4.追加支給や再年調、中途退社・入社における対応について
通勤手当の追加支給
令和7年4月1日に遡り改正後の非課税限度額との差額を通勤手当の追加支給として支払う場合、既に支給された通勤手当と追加で支給する通勤手当との合計額が改正後の非課税限度額の範囲内であれば、その全額が非課税となります。その場合は年末調整で精算等の対応は不要となります。
再年調
令和7年4月1日以降、従業員が死亡又は海外勤務で非居住者となり、すでに年末調整を行っている場合、改正前の非課税限度額を超えて通勤手当を支給していた際には、改正後の非課税限度額に基づき年末調整の再計算を行う必要があります。
中途退社・入社
年の中途に退職・入社した従業員がいる場合にも注意が必要です。令和7年4月1日以降に中途退職した者に支給していた通勤手当が改正前の非課税限度額を超えており、新たに非課税となる金額がある場合には、既に交付した源泉徴収票を再交付する対応をとることになります。
源泉徴収票の「支払金額」欄を訂正し、「摘要」欄に「再交付」と表示して、改めて中途退職者に源泉徴収票を交付します。令和7年4月1日以降に前職の会社を退職し、中途入社した従業員がいる場合で、前職で課税された通勤手当がある際には、改正後の非課税限度額に基づき前職の会社から再交付された源泉徴収票の提出を受ける必要があり、改正後の非課税限度額に基づく前職における通勤手当の課税・非課税となる金額を踏まえ、年末調整を行う必要があります。
結論
令和7年は税制改正による給与所得控除や基礎控除等の変更も重なり、かなり処理が複雑となっています。今回の通勤手当の改正も急な話で情報の整理も大変になりますが、今年の年末調整は改正内容を正確に把握し慎重に処理を行っていくようにしてください。
- 病院・クリニックの方へ
- 歯科の方へ
- 新規開業をお考えの方へ
- 医療法人設立をお考えへ
- 事業承継・相続・売却をお考えの方へ
グループのサービスご紹介






















