持分あり医療法人の出資持分の贈与・売却について
1.はじめに
持分あり医療法人で出資持分を他者に渡す場合は基本的には贈与・売却・相続の3つの方法のいずれかになります。
今回はそのうちの贈与と売却についての課税関係について紹介していきます。
2.出資持分の贈与
そもそも出資持分を贈与できるのかというと、定款で禁止されていなければ贈与することが可能です。
それでは、贈与した場合の課税関係ですが、贈与を受けた者に贈与税が課税されます。
その際の贈与税の計算方法には2種類あり、暦年贈与と相続時精算課税制度の2つがあります。
暦年贈与の計算式は下記のとおりです。
「贈与年度の贈与金額-110万円」✕税率-控除額
※税率と控除額については関係性と金額によって変更になりますので省略いたします。
一方相続時精算課税制度には下記のとおりです。
「贈与者ごとの贈与金額-2500万円」✕20%
※相続時精算課税制度には要件もあるため事前の確認が必要になります。
このどちらかを選択するようになります。
控除額だけをみると相続時精算課税制度が有利なように見えますが、一度相続時精算課税制度を適用すると、その適用以降も贈与者からの贈与についてはこちらの制度を適用しなければならず、暦年贈与制度が適用できなくなります。
また、贈与金額については、株式会社の株とおなじように、「財産評価基本通達194―2」によって金額を算定する必要になります。
贈与者が個人ではなく法人の場合は贈与をした方にみなし譲渡所得が課税されるため、注意が必要です。
3.出資持分の譲渡
出資持分を他者に売却する場合も贈与と同じく定款へ記載がなければ問題ありません。
売却した場合の課税関係ですが、売却をした者に譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税の計算式は下記のとおりです。
譲渡による総収入金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得金額
譲渡所得金額✕20%(所得税15%・住民税5%)
※現在復興特別所得税の加算があるため、所得税✕2.1%が加算されます
売買の時も贈与と同じように評価を行い譲渡による総収入金額を計算する必要があります。
また、株式会社や営利法人に売却することも可能ですが、議決権はないため社員にはなれません。
4.終わりに
出資持分を移動する目的は主に医業承継対策になってくるかと思います。その際に税金がどのくらい係るか一度財産評価を行い、万が一に備え準備をされてみてはいかがでしょうか。
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