医療法人は交際費が全額経費にならないって本当ですか?

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1.はじめに
新型コロナウイルス感染症は、未だ落ち着きを見せず、まだまだ日常生活にも影響が出ている状態です。しかし、一時期の緊急事態宣言の発生時よりも行動制限等は緩和されて来た印象ですので、少しずつ外食やゴルフなどを再開された先生も多いのではないでしょうか。今回は、「医療法人の交際費」についてご注意頂きたい点についてご紹介いたします。
2.法人区分ごとの一定措置
まず、交際費は「原則」法人税法上の経費にはなりません。但し、各法人の区分に応じて一定の措置が設けられています。
①資本金・出資金の金額が1億円以下である等の法人は下記のイ・ロのいずれかの金額が損金算入(=経費)になります。
イ)交際費等の額の内、飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%
ロ)年間800万まで(事業年度が12ヶ月未満の場合は800万にその事業年度の月数を乗じ、これを12で除した金額)
②資本金・出資金の金額が1億円超100億円以下である等の法人
イ)交際費等の額の内、飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%
3.持分あり?なし?医療法人の種類によって変わる上限額
医療法人が持分ありかなしかで交際費の上限が変わってきます。
そもそもご自身の医院が持分ありかなしかわからないという先生は先に下記をご覧ください。
ご自身の医院が持分ありかなしか見分ける方法
直近の決算書の「貸借対照表」の「純資産の部」をご覧ください。そこに「出資金」と記載がある場合は持分ありの医療法人です。
「基金」と記載がある場合は持分なしの医療法人となります。
持分ありの医療法人の場合
持分ありの医療法人は出資金の金額が1億円以下のため、上記のイもしくはロの金額が経費になります。実質的に800万円までは交際費として認められる。ということになります。
持分なしの医療法人の場合
それでは、持分なしの医療法人はどうでしょうか。持分なしの医療法人には、「出資金」という概念が存在しないため、「出資金」の変わりに「出資金に準ずる額」というものを基準に判定をしなければなりません。
出資の金額に準ずる額の計算式
(期末総資産簿価-期末総負債簿価-当期利益(または+当期欠損金))×60%
この、「出資の金額に準ずる額」が上記のいずれの区分に該当するかで、経費になる金額が変わる、ということになります。
出資の金額に準ずる額の計算式を記載しましたが、「そんなに難しい用語で書かれてもわからないよ!」という方は、決算書の「貸借対照表」の「純資産の部」の合計額をご確認ください。
ここの金額が1.6億円(正確には1.6666……億円)を超えると②の法人に該当してしまい、支出した交際費等の額の内、飲食その他これに類する行為のために要する費用の50%しか経費にならない、という形になります。
支出した金額の50%しか経費にならなくなると、これまでよりも法人の納税負担も増えてきます。
例:これまで年間300万交際費にしてきた医院が50%しか認められなくなった場合(法人税率30%とした場合)
150万が損金不算入となり 150万✕30%=45万円の納税負担増
判定の基準となる「純資産の部」は、医療法人の利益が毎年積み重なっていくことで増えていきます。
4.最後に
役員報酬や役員退職金の適切なタイミングや適正な金額での支出、医院の修繕などを行い、利益が蓄積しすぎないようにご検討されてみるのも良いかと思います。
▼関連記事
『交際費と隣接する費用の考え方』
https://www.upp-medical.com/column/clinic-management/2718/
『改めて交際費について確認しましょう』
https://www.upp-medical.com/column/clinic-management/4746/
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