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2023/10/10

海外勤務時の公的保険の適用はどうなる?

1.はじめに

 
コロナの落ち着きに伴い、ヒトとモノの国際的な移動が活性化しております。クライアント様によっては、自社の従業員を海外支店へ転勤させたりグループ会社への出向を行うなどの場面も従来に比べ増えてくるかと思われます。
ところで、従業員を雇用するにあたり、労災保険や雇用保険、さらに社会保険といった公的な保険への加入が必要ですが、これら従業員が海外勤務することとなった場合の取り扱いはどうなるのでしょうか。
本日は、海外勤務時の労災保険、雇用保険、社会保険についてお伝えいたします。いずれも日本国内の事業所でそれぞれの保険が適用されている前提の内容ですのでその点はご注意いただければと思います。

 

2.海外勤務時の労災保険

海外勤務は「海外出張」「海外派遣」の場合で分けて考える必要があり、適用の区分が異なります。
海外出張とは海外への視察や研修、商談などのイメージで、この場合は国内にいるときと何ら変わらず労災保険が適用されます。一方で、海外派遣は海外の事業場への転勤や(在籍)出向(※1)など現地事業場での指示等を受けながら業務を行うことを指しており、この場合、原則として労災保険の適用はなくなります。ただし、「特別加入」という手続きを行うことで任意に加入することができますので、状況に応じて是非ご活用されることをおすすめいたします。
※1)本稿において、「出向」とは“在籍”出向を指します。これは、貴社に籍を置き(雇用関係は継続し)つつ、グループ会社等の別法人の会社へ技術的な指導や個人のキャリア形成、人事交流等を目的に身を移し、そこの業務指示に従って業務を遂行する形態をいいます。

 

2.海外勤務時の雇用保険

雇用保険については、国内の事業所と雇用関係が継続していれば、雇用保険の資格自体は継続します。
ただし、海外の出向先等が給与の全額を支給している場合(つまり国内の事業所からの給与支払いがない)は注意が必要で、それは海外出向中にやむなく退職してしまった場合です。

細かな要件は省かせていただきますが、1年を“超えて”海外勤務した場合などは帰国後1年以上国内で勤務しないと失業保険を受けられない可能性があります。ただし、この場合は「算定対象期間の延長(※2)(※3)」という手続きを行えば3年“以内”の海外勤務中の退職であっても失業保険を受給できる場合がありますので今一度、勤務や給与の支給実績等を確認してみましょう。その他、離職票に記載すべき給与には注意が必要です(※4取扱要領P89下段:ル外国駐在員に対して支払われる外地給与)。

 

3.海外勤務時の社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金)

社会保険の適用について、こちらも国内の事業所と雇用関係が継続していれば、健康保険と厚生年金の資格は継続しますが、給与の全額を海外の出向先が支給する場合は原則として資格を喪失します。
また、国内の事業所から給与の一部が支給され、また、海外の出向先からも“国内事業所の給与規定に基づいて”給与が支給されている場合は、両者を合算した額で標準報酬を決定していくこととなります(※5)。
介護保険については「日本国内に住所が無い方」は適用されませんので住所を海外に移す場合、年金事務所へ「介護保険適用除外等 該当非該当届」の提出を行う必要があります。

 

4.最後に

以上のように、従業員の海外勤務時の保険については日本国内とその適用や運用が異なる場合があり、思わぬ不利が発生する可能性もあります。
また、海外赴任先によって、現地の公的保険への加入が義務付けれ、その場合、二重に保険料を負担しなければならないことが想定されます。相手国と日本が「社会保障協定」を締結している場合は二重適用を回避できるなど国によっても取り扱いが異なってきますので、余裕を持った対応を心がけましょう。

 


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